乳癌に対するアントラサイクリン治療反応に関係する遺伝子変化

2009年09月22日

2009-05-08 12:24:03 -0400 (ロイターヘルス)発


ニューヨーク(ロイターヘルス) - トポイソメラーゼIIα(TOP2A)遺伝子の変化は、乳癌に対するアントラサイクリン含有レジメンの反応性を、アントラサイクリンを含まないレジメンより向上させることに関係しており、これはHER2が増幅した患者に見られる特徴と類似している、とJournal of the National Cancer Institute誌5月6日号で報告されている。

University of Toronto(カナダ オンタリオ州)のDr. F. P. O'Malleyらは、リンパ節転移陽性乳癌を有する閉経前の女性を対象とし、補助化学療法の効果とTOP2A遺伝子変化との関係を、CEF(シクロホスファミド、エピルビシン、5-フルオロウラシル)、CMF(シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル)両レジメンの比較によって調査した。計438の腫瘍を検討した。

TOP2A遺伝子変化単独では、無再発生存期間や全生存期間への独立した関与は認められなかった、と著者らは報告している。

一方、TOP2A遺伝子変化のある患者では、CEF療法の方がCMF療法よりも経過が良好であった。

さらに、TOP2AとHER2がともに変化していた患者では、CEF療法の方がCMF療法よりも無再発生存期間と全生存期間を改善する傾向を示した。

「これらの結果から、TOP2A遺伝子変化やHER2の増幅がない腫瘍を有する患者ではCMFなどの毒性の低いレジメンによる治療が可能であるが、TOP2A遺伝子変化やHER2の増幅がある腫瘍を有する患者ではCEFなどの高用量アントラサイクリンを含むレジメンを受けるべきである」とDr. O'Malleyらは論じている。

また、「我々のデータは、アントラサイクリン併用レジメンを選択する際の指標として、TOP2A遺伝子変化とHER2増幅の測定が同様に有用であることを示している。」と補足している。

「依然として残っている問題は、トラスツズマブやラパチニブなどHER2遺伝子変化を直接の標的とする薬剤の使用が可能である現在においてもなお、HER2とTOP2が共に増幅している患者が、アントラサイクリン系薬剤から付加的なベネフィットを得ることができるかどうかである」と関連論説の著者らは述べている。

「そのためには、HER2抗体を併用し、アントラサイクリンベースのレジメンと、非アントラサイクリンレジメンを比較した、近年実施あるいは現在進行中の大規模な補助療法試験を精査する必要があるだろう」とUniversity of California School of Medicine(カリフォルニア州ロサンゼルス)のDr. Dennis J. SlamonおよびUniversity of Southern California Keck School of Medicine(ロサンゼルス)のDr. Michael F. Pressは記している。

「しかしながら、今回のデータおよびこれまでに発表された多くの文献から、その『判断基準』はHER2発現が正常な乳癌であることだと考えられる」と同研究者らは結論付けている。「このような患者は、補助療法の一環としてアントラサイクリン系薬剤の投与を受けるべきではない」


J Natl Cancer Inst 2009;101:644-650,615-618.


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Posted by 弥永協立病院スタッフ at 10:00│Comments(0)乳がん関連ニュース
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